世界選手権への道 DEAF TEAM JAPAN vol.1 始動

「音が全く聞こえない」あるいは「難聴」などの聴覚障害者を「デフ」と言う。「デフ」の競技者たちは、聴覚の障害以外は五体満足であることから、「パラリンピック」(身体障害者のスポーツの祭典)とはまた違うカテゴリーで、世界一を争う。それが4年に一度、開催される聴覚障害者のスポーツの祭典「デフリンピック」だ。
 ビーチバレーは、05年メルボルン大会から正式種目となった。日本は第2回の台北大会から出場。女子代表2チームを送り出し、9位という成績を残した。初めての世界大会で、「世界に通用する」という自信を手に入れた日本は、次なるデフリンピックに向けて、定期的に強化合宿を行ってきた。
 今年10月には、牛尾新監督が就任。そんな中、朗報が舞い込んだ。すでに他競技でも行われている「世界選手権」が、ビーチバレー界においても来年を目安に開催が予定されているというものだった。

チャンスを与えて、人材発掘

牛尾洋人総監督

- 監督に就任したいきさつから教えてください。

牛尾 昨年、健聴者とデフの選手の交流大会を企画しようとした際に、協会の方にご挨拶させて頂いたのが、デフバレーとの出会いのきっかけでした。残念ながら、大会は実現しなかったのですが、今年の6月に協会から『代表チームの監督に』という話をいただきました。自分自身、監督経験もないのでとまどいもありましたが、何度か視察させてもらった上で、強化はもちろんのこと、デフビーチバレーの普及も兼ねて取り組んでいこう、と決意しました

- 選手選考はどのように進められていますか?

牛尾 強化合宿は、メンバーを固定しない有志による自主参加です。それ以外にも、インドアの選手も含めて、伸びしろがあると思った選手には積極的に参加を募っています。人材を発掘する意味を込めて、多くの選手にチャンスを与えるスタンスをとっていきます。合宿の内容と結果を見て、5月くらいまでにはメンバーを絞っていきたいと考えています

- 世界と日本のレベルは、どういう関係にありますか?

牛尾 前回のデフリンピックのビデオを見て分析したところ、男子の強豪国は、身長2m級の選手が揃っていて、健聴者並みの高さで攻撃力のあるチームが多い。付け焼刃の強化では、到底太刀打ちできないでしょう。女子に関しては、大型のチームは増えてきましたが、日本が持っている技術力を磨いていけば、メダルに手が届く可能性はあると睨んでいます

練習環境を整えていく普及面での工夫が必要

- 世界の強豪に勝つためにはどうすればいいのでしょうか?

牛尾 男女ともにミスを出さないバレーを展開していくこと。相手が嫌になるまでボールを拾い続けて、粘り強いバレーを展開していくことが、絶対条件に挙げられます。そのためには、今まで以上に選手たちがボールにさわる時間を増やして、コミュニケーションを含めた情報を共有していくことが必要になってくるでしょう。ただし、現時点では、合宿以外の場でビーチバレーに触れ合う機会がないことが、課題。そこをクリアするためにも、今回の合宿では、同時開催されていた『鵠沼FainalCup』に何人かの選手を出場させました。地方の選手も多く来ていたので大会を通してコミュニケーションをとることで、地元に帰った時も仲間に入れてもらえるように、練習環境を少しでも整えていくことが目的でした

- 普及面の課題にも、直結しますね。

牛尾 11月に開催された『ジャパンデフビーチバレーボールカップ2011』では地方の選手も大勢参加してくれましたが、デフ・ビーチバレーの存在をもっと知ってもらうには、普及面で工夫していくことが必要ですね。選手を合宿に呼ぶと費用もかかってしまい、人材も限られてしまうこともありますが、今後は、私たちスタッフが地方に出向いて指導する、というスタイルをとることも大切だと思っています。強化費用も限られた状態が続きますので、チームTシャツを販売して支援を募り、スポンサーを獲得できるような活動を行って何としてでも男女2チームずつ世界選手権に送り出したい。もちろん、ただ出場するだけではなく、メダル獲得に向けて上位進出を目指していきます

目指せ! 世界!PLAYER’S INTERVIEW
目指せ! 世界!PLAYER’S INTERVIEW

12月3日(土)、4日(日)、神奈川県で行われた強化合宿には、男子8名、女子6名が参加した。3日は、川崎マリエンにてフィジカルトレーニング、4日は鵠沼海岸にてボールを使った基本練習を行った。
 ボール練習では、テクニカルアドバイザーの高尾和行氏が、初心者を中心にパス、トスの基礎をみっちり指導。実績がある数名の選手は、同時開催されていた『鵠沼FainalCup 』に出場し、健聴者と交流を深めた。中には国内ツアーに参戦しているトップ選手とペアを組んだ選手もおり、貴重な経験を積んだ。
 次回の強化合宿は、2月に予定。春の訪れが近づくとともに、デフ・ビーチバレー日本代表チームは、さらなる進化を目指していく。

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