- 今日はよろしくお願いします。なかなかいらっしゃらないのでヒヤヒヤしました(笑)

石田別の取材では日にちを間違えたりしてますからね(笑)。

- 早速ですが2月のポール・ウィリアムス戦後はどのように過ごしていましたか?

石田軽く練習していたんですけど、体調を崩しました(苦笑)。

- それだけ普段と試合とのテンションの度合いが違うということですよね。海外で戦うにあたって気にしていることはありますか

石田テンションを上げすぎないというのはひとつですよね。試合前はテンション上がるし、気も昂るんですけど、よそ見せずリングの相手だけを見ておこうと意識することです。国内と海外で試合することに何も変わりはないですけど、試合の盛り上げ方や観客の反応だったり向こうの雰囲気は最高ですよ。アメリカのリングは僕の憧れだったので、そこで試合できることはすごく嬉しいです。

- その憧れの舞台で戦うには普通の人があまりやらないようなことも練習に取り入れているのではと思うのですが、試合前にはアメリカで合宿をするそうですね。

石田はい、最低でも1カ月前にはロスに行きます。向こうに行ってか
らはほぼ毎日スパー中心の実戦練習で、もう 15 回ぐらい行ってますね。

- 国内のジムはスパーリング中心の練習内容ではないのですか?

石田毎日っていうほどスパーリングはしないんじゃないですかね。日本人とはパンチの質も違うし、パンチに慣れるという意味でも良い練習になります。技術的には負けてないし、僕は何度も行っているから黒人が怖いとか、白人やメキシカンが…っていうのは全く関係ありません。最初は黒人っていうだけで怖かったし、強いんじゃないかと思ったけど、実際にやってみて強い人もいればそうでない人もいます。

- 実際に肌を合わせないとわからないものですね。

石田 そうですね。世界ランカーだから強いとは限らないし、4回戦でもめちゃくちゃ強い選手もいる。アメリカは肩書きとか関係ないんですよ。世界チャンピオンと4回戦が普通にスパーリングしますからね。

- なるほど。海外の空気にも慣れているようですが、初めての試合の時は違ったのではないですか?

石田そうですね、初めてはスウェーデンのアマチュアの試合だったんですけど怖かったです。その時は海外に行くこと自体初めてだったので、行くだけで怖かった。

- その当時、体調管理はうまくいったのですか?

石田食べるものがなくて逆に痩せ過ぎてしまってコンディションは良くなかったですね(笑)。

- その頃からコンディショニングで取り入れたものや改善したことはありますか?

石田そりゃあナップルじゃないですか(笑)。アメリカは濃い、油っぽい食事が多いですからね。以前は10本ぐらい瓶で持って行ったのですが、限度があるので今回は錠剤のナップルを使いました。

- それだけ体感がある、と。

石田もちろん! 187㎝から70㎏ぐらいまで落とすので減量はメチャクチャきついですから。まぁミドル級が体調的には一番ベストだと思うんですけどね。普段は80㎏以上あるので10㎏は減量します。

- では減量中の食事も気を使うのではありませんか?

石田そんなに気にしないですね。りんごやバナナとかフルーツを毎食食べて、加えて主食がある感じです。計量終わりに水分をとったらあとはステーキだったり好きなものを食べます。試合の時には3、4㎏戻ってますかね。

- ステーキですか!?計量後は胃に優しいものから摂取したほうが良いという印象があります。

石田むこうは食べるものがないですからね。この前の試合(2月のウィリアムス戦)もアメリカの田舎町だったんですけど、食べるものがないんですよ。うどん食べたいけどお店はないし、アメリカ系のレストランしかないですから。今まで食事を気にしたことはなかったですけど、肉は絶対に食べたいですね。日本で試合があってもサムゲタンとか自分の好きなものを食べます。

- なるほど。練習の話題に戻りますが、石田選手の存在を知っている読者であれば、どんな練習をしているのか気になるところだと思うのですが、どんなメニューなのでしょう。

石田ほんと、普通の練習ですよ。スパーリングだけをガンガンやるぐらいで、走るのも嫌いやし。

- ではなぜ、“普通の練習”で世界の強豪と戦えるのでしょうか。

石田パンチをもらいたくないと思うからじゃないですかね。人と違ってるところはそこの意識がすごく高いっていうことです。それはボクシングを始めた当初からで、パンチを打った時のガードやディフェンスの意識が高かったです。

- 技術的なこと以外にこれまで戦ってきて、自分を支えるものは何だと思いますか?

石田勘違い、ですかね。自分を信じる、と言い換えられるかもしれません。ウィリアムスはアメリカの超ビッグネームで、何年か前やったら僕が試合するなんて言ったら笑われるくらいの選手です。でも、海外で試合するとなったときに気後れみたいなことが僕は全然ありませんでした。気持ちの面では対等な立場にあると思ったし、それは自分がちゃんとした技術を持っている裏づけがあるからです。

- そういった考え方に切り替わるキッカケはあったのでしょうか。

石田海外で試合するようになってからですかね。僕ってすごいミーハーなんですけど、トレーナーについてくれている日本人の方はアメリカの大きな舞台にも慣れてるからすごく普通なんです。オスカー・デラ・ホーヤに会っても普通に話したりしてる。僕は気持ちの中ではすごく昂ぶってるんですけど、そういった光景を目にするうちにそれが普通の環境になったんですよね。

- トレーナーの方からすれば「彼も同じ人間だよ」と。

石田そう、そうなんです。根本的にはまだまだ気持ちが揺らぎやすい人間ですけど、ボクシングに関してはないですね。普段は忘れ物も多いしボーっとしてるんですけど(笑)、試合になるとシャキっとするんです。ホンマは入場のときに会場の雰囲気も見たいし、リングサイドにいるスター選手も見たいですけど気が散りますからね。

- ではトレーナーの方から大きな影響を受けたんですね。

石田そうですね。僕、まわりの人に影響されやすいので身近にプラス思考の、向上心の強い人がいると自分の気持ちも上がっていくんです。
 嫁さんがすごくしっかりしている人で、引退しようと思ったときに初めて口にしたときも「言ったらあかん。しょうもないことで引退したら後で絶対後悔する」って言ってくれたんです。それで去年のカークランド戦の試合前、「現役続けろって言ったやろ? この試合で恥かいたらお前のせいやからな」って冗談で言ったんです。そしたら「じゃあ勝ったら私のおかげと思ってな」ってうまく返してくれましたね。嫁さんは臨床心理士をやっていたので、他の試合のときにも「今回はどんな作戦なの?」とか聞いてきて、それを僕に口で言わせて意識させたり、知らないところでマインドコントロールされてるみたいなんです(笑)。
 西岡チャンピオンも負けてあれだけすごい人になってますから、負けは恥ずかしいことじゃない。戦わないことが一番ダメなことだし、負けたとしても少なからず戦ってはいますからね。

- ─石田選手は過去にボクシングから離れ、児童福祉施設に勤められた経緯もありますが、それが選手生活にとってプラスになることもありましたか?

石田の頃の人とは今でもお付き合いさせてもらってますし、僕が担当していた子供たちは当時中学、高校生だったんですけど、30代になった今も応援してくれますから嬉しいですよ。僕の場合はうまいこと休みながらボクシングをしてたんかなぁと思うんです。2年間、児童福祉施設に勤めたのも良かったし、その間ボクシングから離れたのは肉体的にも、精神的にも良かった。

- もし2年間の空白がなかったら、と思うこともありますか?

石田……もっと早く海外に出ておけばよかったとは思いますね。それは年齢的にもトレーナーに教えてもらったことを吸収しにくいなって思うんです。30年近くボクシングやってきて、ここにきて違うボクシングを教えられてもなかなかできない。教えてもらえることを吸収できないイライラもあります。

- なるほど。最後に、これまでの石田選手の経験から若い選手たちにアドバイスがあればお願いします。

石田まぁ……酒、タバコは止めておいたほうがいいよ(笑)。

- 基礎中の基礎ですね(笑)。それを踏まえて若い選手にはいろいろな経験をしてほしい、と。

石田そうですね。先にも言いましたけど黒人だから、メキシカンだから強いわけじゃないし、日本人が負けてるわけじゃないっていうのは言いたいですね。

インタビューアーカイブ

もうひとつの海外へのチャレンジ 石田順裕

石田順裕 Ishida Nobuhiro

1975年8月18日、大阪府出身
身長188cm
戦績:30戦 22勝 6敗 2分
グリーンツダ ボクシングクラブ所属

グリーンツダボクシングクラブ

住所:大阪府大阪市東成区深江南1-11-11ビーラックビル2F
アクセス:大阪市営地下鉄千日前線「新深江」駅より徒歩8分
TEL:06-6981-2117
URL:green-tsuda.com